過労死対策法施行。しかし法律だけでは過労死は防げない。

ホット!「昨日のニュースから」
10 /31 2014
 過労死対策法が明日(平成26年11月1日)より施行される。
 過労死の人の中には30代や40代の働きざかりの人も多数いるだろう。
 残された妻や子供達の悲しみが伝わってくる。
 突然の死に驚き嘆くだけでなく、これからどのようにして生活をしていくのか、残された家族は悩み苦しんでいることだろう。

 さて、その過労死対策法の内容は、国や地方行政団体が「過労死等の防止のための対策を効果的に推進する責務を有する」という条文があるが、使用者である企業には「国及び地方公共団体が実施する過労死等の防止のための対策に協力するよう努める」という程度のことしか記載されていない。
 具体策として《過労死等防止啓発月間を設けること、調査研究、啓発、相談体制の整備等》ということしか記載されていない。
 なんとも中身のない法律だろうかという気がする。

 この法律が施行されても、すぐに過労死が減ることはないだろう。
 問題はそのような過酷な労働を強いる企業であり、企業の姿勢を考えなければ問題は解決しない。
 月間150時間も200時間も従業員を働かせて、過労死が起こったとすれば、その企業は業務上過失致死に問われてもいいのではないか。
 場合によれば、それは、あまりにも過酷な労働時間を短縮しなかったという、企業による《不作為による殺人》とも言うべきである。
 ブラック企業という言葉があるがそれを通り越して「殺人企業」と言っても言い過ぎではない。

 この程度の法律では企業は変わらない。
 企業を変えるなんらかの力が必要である。
 労働組合が大きな声を上げることも必要だろう。
 また、個々の労働者が取り組むべきこともあるだろう。
 内部告発という方法で、企業に対して抗議の声をあげる方法もあるが、職を失うおそれがあって、そう簡単ではないだろう。
 しかし、残業がきつくて、それが理由で退社するのであれば、支払われなかった残業代をきちんと請求すること程度のことはしてもいいのではないか。
 また、なんらかの方法で、労働基準監督署への告発も可能ではないか。
 個々の労働者が、せめて一声、一つの行動をし、それが積み重なって、初めて企業を動かすことが可能になるのではなかろうか。
 最後に、なぜ、そんなにも長く残業しなければならないのか、その点も考えておく必要もあるだろう。
 無駄な会議や作業はないか、仕事の効率化のためのアイデアはないか?
 法律はできても、それを現実の残業を減らすような力にするには、国や企業だけではなく、直接、被害を受ける労働者自身のたえざる努力が必要ではなかろうか。


参考:過労死等防止対策防止対策推進法の要約
●(第四条:国の責務等)
国や地方公共団体は、過労死等の防止のための対策を効果的に推進する責務を有する。
事業主は、国及び地方公共団体が実施する過労死等の防止のための対策に協力するよう努めるものとする。
●(第五条:過労死等防止啓発月間)
国民の間に広く過労死等を防止することについて自覚を促し、これに対する関心と理解を深めるため、過労死等防止啓発月間を設ける。
●(第八条:調査研究等)
国は、過労死等に関する実態の調査、過労死等の効果的な防止に関する研究その他の過労死等に関する調査研究並びに情報の収集、整理、分析及び提供を行うものとする。
●(第九条:啓発)
国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じて、過労死等を防止することの重要性について国民の自覚を促し、これに対する国民の関心と理解を深めるよう必要な施策を講ずるものとする。
●(第十条:相談体制の整備等)
国及び地方公共団体は、過労死等のおそれがある者及びその親族等が過労死等に関し相談することができる機会の確保、産業医その他の過労死等に関する相談に応じる者に対する研修の機会の確保等、過労死等のおそれがある者に早期に対応し、過労死等を防止するための適切な対処を行う体制の整備及び充実に必要な施策を講じるものとする。

最高裁、マタハラは不当と判断(弁護士の眼から見た3つのポイント)

ホット!「昨日のニュースから」
10 /24 2014
 昨日(平成26年10月23日)、最高裁でマタハラ(妊娠や出産を理由に不利益扱いすること)は不当とする判決(判例要旨は末尾に掲載)があった。
 感じたことを3つにしぼって、述べてみる。

■ポイント1 女性の裁判長だから?
 記事によると裁判長は女性であるが、判決内容は5名の裁判官の全員一致の結論であったという。
 性別関係なく、マタハラは認めないということである。
 微妙な事件であれば、必ず、1~2の反対意見が付されているが、今回は全く反対意見がなかった。
 最高裁判所のマタハラに対する確固たる意志を表明したということであろう。

■ポイント2 同意していた?
 原審《広島高裁 平成24年(ネ)135号 平成24年7月19日判決》は、その女性が不利益扱い(副主任から降格したこと)に同意したと認定したようだ。
 しかし、同意した人間が最高裁まで争うだろうか。
 仮に同意と解釈されるような言動があったとしたら、それは会社の圧力による強制であって、決して任意になされたのではなく、無効と考えるのが筋だろう。
 いずれにせよ、妊娠出産ということだけを理由にする差別は、有能な女性のやる気を喪失させるものであって、大きな目で見れば会社にとっても不利益を及ぼすものだ。

■ポイント3 特段の事情があれば不利益は認められる?
 妊娠や出産したことだけを理由にいかなる不利益扱いも認められないというわけではなく、《特段の事情》があれば不利益扱いは認められると判決は言っている。
 《特段の事情》というのは分かりにくいが、《普通の人の感覚からいって、これはやむをえないというような》事情があるなら不利益扱いは許されるということになる。
 例えば週に2回しか出てこられないというような、管理職としての職責を全うできないという場合なら降格もやむを得ないかもしれない。
 しかし、その場合でも、全日出勤が可能となれば元の地位にもどす必要があるだろう。


【マタハラ最高裁判例要旨】
一般に降格は労働者に不利な影響をもたらす処遇であるところ、上記のような(男女雇用)均等法1条及び2条の規定する同法の目的及び基本的理念やこれらに基づいて同法9条3項の規制が設けられた趣旨及び目的に照らせば、女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は、原則として同項の禁止する取扱いに当たるものと解されるが、当該労働者が軽易業務への転換及び上記措置により受ける有利な影響並びに上記措置により受ける不利な影響の内容や程度、上記措置に係る事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして、当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき、又は事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして、上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは、同項の禁止する取扱いに当たらないものと解するのが相当である。

刑事弁護士の気概

ホット!「昨日のニュースから」
05 /22 2014
・・片山事件に見る弁護士のあり方・・

 この弁護士、えらい気合が入っているなぁ。

 今週の月曜日(5月19日)、朝ご飯を食べながらテレビを見ていた。
 パソコン遠隔操作事件の片山被告の弁護士が画面に出ている。

 《片山被告の無罪を確信している》と断言している。
 率直にいえば《違和感》を感じたが、その反面で《すごいなぁ》とも感じた。
 《違和感》は事件の流れからいえば、無罪というような事件ではないのに、この弁護士はなぜこんなに断言するのだろうかという疑問から来ている。
 《すごいなぁ》というのは、にも関わらず無実であると断言しているというところから来ている。

 私(大澤)は民事事件しか扱わない。
 事件を扱う際、依頼者の言うことは間違いないかもしれないが、記憶違いもあるだろうし、場合によれば嘘かもしれないということも考慮しながら動くことも多い。

 しかし、この佐藤博史弁護士は依頼者を全面的に信頼し、その無実を確信している。
 民事弁護士と刑事弁護士との違いが鮮明に出ているということだろう。

 ところが、翌20日、片山被告は、犯行をしたことを全面的に認めた。
 佐藤弁護士は騙されたという事だ。
 世間の人の目から見ると、みじめなピエロ役を演じたことになる。
 佐藤弁護士の心中はどのようなものだろうか。

 翌日(5月21日)の朝刊によると、片山被告が犯行を自白した後の弁護士のコメントは「私は完全にだまされていた」といものであったという。

 だが、その後がすごい。
 「ただ、裏切られたとか、否定的な感情はわきませんでした」ということで、片山に対して、一切の文句や非難、苦情は言わなかったようだ。
 更に夕方のテレビを見ていると、弁護団としては、片山の精神鑑定を求めるという。
 ここまで徹底していると一種、感動すら覚えることになる。

 今、私の心の中では、《あんな弁護士には到底なれんなぁ》という反発と《そこまで徹底できるのか》という羨望の気持ちが複雑に入り混じっている。

 でも、もしなんらかの機会に、佐藤弁護士を見かけることがあれば、少し離れたところからでも、小声で、次のようなことをと言いたいような気持になっている。
《先生、よく頑張りますね・・・》

小保方さんの弁護士は何をしているのか

ホット!「昨日のニュースから」
04 /10 2014
・・防御のためには攻める必要がある・・

昨日、STAP細胞に関して、小保方さんの記者会見があった。
会見自体は見ていないが、ニュースで見た限りの感想を述べてみる。

まず、小保方さんについては、一生懸命弁明しているという感じがした。
問題は一生懸命弁明していても、それが弁明になっていないのではないかということだ。
弁護士が記者会見に立ち会ったようだが、彼はどのようなふるまいをするべきだったのだろうか。
いや、言葉を変えていえば、どのように記者会見全体をコントロールすべきであったのだろうか。

弁護士は小保方さんが突っ込まれた場合、質問を打ち切るということで、小保方さんを守ろうとしていたようだ。
もちろん、それは正しいことであり、衆人環視の中で、この彼女を孤立させることは避けなければならない。
しかし、それはあくまで防御に過ぎない。
この記者会見で最もするべきことは、小保方さんの研究が間違いのないものであったという印象を、テレビを通して訴えることではなかったか。

たとえば、論文に掲載した写真は間違って掲載した、正しい写真はあると小保方さんは主張する。
それなら、弁護士はそのような写真をなぜ、用意しなかったのか。
なぜ、議論の焦点をそこに導き、タイミングよくプロジェクターで他の写真を投影しなかったのか。

お涙頂戴の情状弁論ではなく、私は無罪です、それを証明するこんな証拠があります、是非見てください、という場に変えることができなかったのか。
防御ではなく、そういう攻撃的な記者会見をできないというのでは、弁護士として「何をしているのか」と言われても仕方ないだろう。
もちろん、そのような写真がないから出せなかったというのなら、それは弁護士の責任ではないが。

最後に言えば、私としては、小保方さんの研究が意義あるものであること、小保方さんには今後も頑張って研究を続けてほしいと思っていることは付け加えておきたい。


亀岡暴走事件で、少年の初公判と少年審判

ホット!「昨日のニュースから」
07 /20 2012
平成24年7月19日Yahoo!ニュースから
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/local/kameoka_traffic_accident/?1342677790

(記事の要約)
京都府亀岡市の無免許運転事故で、19日、運転手(少年)を自動車運転過失傷害に問う裁判の初公判があり、少年は大筋で起訴事実を認めた。

平成24年7月19日朝日新聞デジタルから
http://www.asahi.com/national/update/0718/OSK201207180115.html

(記事の要約)
京都府亀岡市の無免許運転事故で、18日、京都家裁は、少年審判を開き、同乗していた大学生(18歳)を検察官送致〔逆送〕し、もう一人の男子専門学校生(18歳)を保護観察処分とした。

(事務所内の会話)
事務員:運転手はこれから裁判が続いていくようですが、裁判、一緒に乗っていた2人は逆送だとか保護観察だとか・・・どう違うのですか?
弁護士:まず、少年が逮捕されると、捜査を指揮する検察官が、原則としてすべての事件を家庭裁判所に送り、少年の処遇を家庭裁判所が判断します。これを全件送致主義と言い、万引きや無免許運転などの少年事件はたいてい家庭裁判所が処分を決めます。
事務員:でも、今回は無免許運転の上に死亡事故まで起こしていますよ。
弁護士:そうですね。そのような重大事件の場合には、家庭裁判所ではなく、刑事裁判を担当する検察官のところに逆戻りさせることがあります。これを検察官送致と言いますが、一般には逆送などと呼ばれていますね。
事務員:検察官のところに逆戻りさせるのですね。じゃあ、保護観察というのは何ですか?少年院には行かないのですか?
弁護士:少年院には行かずに、保護司という、少年の生活を監督してくれる人を付けながら、社会内で生活することです。保護観察が付くと、少年は月に何回か保護司さんと面会しないといけませんし、保護観察中に事件を起こすとかなり重い処分が出ることが見込まれます。
事務員:今回は、どうして同じ同乗者なのに、処分が違ったのですか。
弁護士:詳しいことは事件記録を見ないとわかりませんが、少年審判では、単に起こした事件だけではなく、その少年の生い立ちから家族や友人、学校や仕事などあらゆる社会的環境を調べた上で、その少年が今後更生できるのかどうかを特に重点的に見ます。生活環境が違えば、同じ事件を起こしたとしても処分が違ってくる可能性はあるでしょう。
事務員:少年は単に事件の重さだけではないのですね。

(北野)