(第6回)一番のブラック企業は、なんと公立学校だった!

教師の残業問題
04 /20 2018
teacher_tensaku_man.png  ~教師の残業問題について考える~(弁護士 岡井理紗)

【問題は山積み・・・どうしたらよいのか】
これまで、5回にわたって、教師の残業問題について考えてきました。
公立学校の教師の労働に関しては、部活動に割く時間が労働時間にあたるかという問題(第2回)、公立学校教師に適用される給特法の問題(第3回)、非正規教員の労働と賃金に関する問題(第4回)など、様々な問題があることがわかりました。
ただ、ここで考えるべきは、「じゃあ、どうすればいいのか」ということです。

【給特法を改正するという方法】
どれだけ残業しても、通常の労働者のような残業代が支払われないという事態を解消しようと思えば、ネックになるのがやはり給特法です。
第3回の記事で詳しくお話ししましたが、給特法は、時間外勤務手当は支払わず、代わりに月給の4%にあたる教職調整額を一律支給すると定めた上で、教員の時間外勤務が増大しすぎないように、学校は教員に原則として時間外勤務を命じてはならないと規定しています。
 ただ、結局この規定は時間外勤務の増大への歯止めにはならず、それどころか時間外勤務をしても時間に応じた手当を支払わなくていいという状況に陥っています。
 この状況では、教員の時間外勤務が増大しすぎないように配慮した元々の趣旨は全く意味をなしていません。
 もっとも、給特法を改正すれば、時間外労働時間に見合った残業代を支払うということになるため、莫大な財源が必要となります。
 したがって、給特法を改正して終わり、という話ではなく、財源確保の方法まで考えておかなければなりません。

【残業上限を設けるという方法】
過重労働を強いられ、精神的にも肉体的にも追い詰められている教師の状況を救い、また時間外労働時間に見合った残業代のための財源も確保する方法を最もシンプルに考えれば、「残業上限を設ける」ことが効果的であるように思われます。
この方法は、2017年5月1日、教育研究者らの発案により、時間外労働を把握し上限規制を設けるよう政府に求めるインターネット署名を、「change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」という署名サイトで集めるという活動において、提案されました。
ただ、残業上限を設けただけで、仕事の量が減らないままでは、自宅に持ち帰って仕事をするなど、「隠れ残業」が横行し、教師らはより過酷な労働環境に陥る可能性があります。

【結局最も大事なのは、労働の効率化です】
 結局のところ、財源を確保し、隠れ残業を減らして、教師の過重労働をなくそうと思えば、最も大事になるのは、「労働の効率化」です。
 教師の労働問題を考えるにあたって根本にある問題点は、「なんでもかんでも教師がやるのが当たり前になっている状況」にあると私は考えます。
 教師というのは子供に関わる仕事ですので、1人の教師がすべての過程に関与できればそれは理想的です。
 ただ、理想を追い求めるあまり、その教師が心身ともに追い詰められるのであれば、そんな教師から教育を受ける子供にとっても、良い状況とはいえません。
 したがって、教師でないとできない仕事とそうでない仕事を見極め、事務的な仕事はアルバイトに、部活動はボランティアになど、現在教師がしている仕事の一部を教師以外に任せるということを考えるべきです。
これから先、集計や情報管理はAIに任せるということも可能になるかもしれません。
 いずれにせよ、教師の労働は、転換点に来ているといえます。

自転車保険に加入しておきましょう

交通事故
04 /11 2018
teacher_tensaku_man.png   自転車保険に加入しましょう(弁護士 北野英彦)

 前回の流れから、慰謝料の続きを書きたいと思っていたのですが、ここ最近、たまたま自転車事故の相談をお受けすることが続きました。
 そこで、みなさまにご注意をいただきたく、今回は自転車事故について書いてみました。

 かつては、交通事故のご相談と言えば自動車同士がぶつかった、あるいは自動車にはねられた事故が多かったのですが、ここ最近は自転車同士、あるいは歩行者が自転車にはねられた事故が増えています。
 このような最近の自転車事故の当事者の方には、ある一つの重要な共通点がありました。

 それは、誰も自転車保険に入っていなかった、ということです。

 大阪府では、平成28年7月から自転車保険の加入が義務化されました。
(大阪府ウェブサイト:大阪府自転車条例

 つまり、大阪で自転車に乗る人はみなさん保険に加入しないといけません。

 ある相談者の方(加害者となった方)は、
「保険に入っていなかったので相手に払うお金がない。そのうち家や給料を差し押さえられるのが怖い」
と心配しておられました。
 また、自転車同士で衝突した被害者の方に話を聞くと、加害者が保険に入っておらず「治療費を払ってくれない。加害者を訴えてくれ」とえらく怒っていました。

 (ただ、この方も「私も自転車保険は加入した憶えはありませんけどね。」とおっしゃっていましたので、加入を勧めておきました。)

 自転車事故であっても100万円を超える賠償義務を負うことは珍しくありませんし、ニュースで見るような数千万円にも及ぶ賠償を命じられる事故もあります。

 事故というのは、被害者はもちろん加害者になった場合も大変な事態です。
 特に自転車の場合、被害者になるだけではなく加害者になる場合も増えてきています。

 大阪では加入義務ができましたが、加入義務がなくとも自転車に乗る人は保険に加入しておきましょう。

 ちなみに、自動車をお持ちの方は自転車保険(あるいは個人賠償責任保険)がオプションで付いていることもありますし、自宅の火災保険にも自転車事故に使える保険がくっついていることもあります(そのほかクレジットカードに付帯する保険や、学校・自転車店が窓口になっている保険もあります)。

 みなさん自転車事故にはご注意を。

(第5回)一番のブラック企業は、なんと公立学校だった!

教師の残業問題
03 /20 2018
teacher_tensaku_man.png  ~教師の残業問題について考える~(弁護士 岡井理紗)

【働き方改革にかかる緊急提言がなされました】
 これまで述べてきたように、公立学校の教師の労働、特に残業問題に関しては、大きな問題があります。
 この点について、平成29年11月6日、現職の教師らが、働き方の改善案を盛り込んだ緊急提言を文部科学省に提出したと発表しました。
 現職の教師らが、何とか自らの労働状況を改善しようと取り組んでいることがわかります。
 今回は、この緊急提言の内容を、取り上げたいと思います。

【「勤務時間」を意識した働き方を進める・・・タイムカード】
 この緊急提言において、もっとも重要視されていると思われる点は、「勤務時間」を意識した働き方を進めるという提言です。
 公立学校では、通常の企業のような「タイムカード」というものはほとんど導入されておらず、勤務時間を客観的に把握できるものがないのが現状でした。
 学校側は各教師の実際の労働時間も把握できていないのですから、これでは労働時間の改善がはかれるはずもありません。
 そのため、そこで、少し前からは、学校にもタイムカードを導入しようという動きが出ていますが、それでもまだまだ少数です。
 教員勤務実態調査(平成28年度)によれば、タイムカードで出退勤時刻の管理を行っている学校は、小学校で10.3%、中学校で13.3%、公務支援システムなどICTを活用して出退勤時刻の管理を行っている学校は、小学校で16.6%、中学校で13.3%にとどまっています。

【「勤務時間」を意識した働き方を進める・・・部活動顧問】
 現在、部活動の顧問は、絶対ではないといいつつ、ほぼ強制的に就任させられているという現実があります。
 しかし、部活動の顧問という役割が、教師らの労働環境をさらに悪いものにしていることは、第2回の記事で述べたとおりです。
 そのため、緊急提言では、部活動の顧問を任意制にする、土日祝日の部活動を禁止するというような内容が記載されています。
 部活動顧問の問題をクリアしようと思えば、その他にも、「部活動指導員」という部活動専門の指導者を雇ったり、地域と連携してボランティアで部活動指導を補ってもらうなど、様々な方策が考えられるところです。

【「チームとしての学校」の実現】
 これからの公立学校運営のために必要なのは、チームとして学校を作り上げることだと思います。
 つまり、学校において発生する様々な仕事を、役割分担、分業制にするということです。
 企業においては、当然に行われていることですが、なぜか学校においては、すべての役割を教師が担ってしまっています。
 そのために、教師の仕事量が増え、残業問題が生じてしまっているといえます。
 たとえば、部活動について、先ほど出てきた部活動指導員にお願いするというのも役割分担の一つです。
 その他、事務作業など教師資格がなくてもできる仕事はできるだけ事務スタッフに、生徒らの精神的サポートは、スクールカウンセラーに、など、それぞれ専門のスタッフに任せることで、教師は学習指導に集中することが可能になると思われます。
 この緊急提言を機会に、大問題となっている教師の残業問題が少しでも改善され、「チームとしての学校」の実現を図る時期が来ているといえます。

入通院慰謝料は弁護士の腕の見せ所

交通事故
03 /12 2018
teacher_tensaku_man.png   ~入通院慰謝料~(弁護士 北野英彦)

 前回は、保険会社が治療費の支払いを止めた場合の通院治療とその注意点についてお話しました。
 今回は、治療期間と並行して発生する入通院慰謝料についてお話ししたいと思います。

(今回のテーマ)
 ・「慰謝料」には様々な意味合いがある
 ・弁護士基準で慰謝料が大幅に増額することがある
 ・弁護士基準は誰でも請求できる


1.「慰謝料」には様々な意味合いがある
 依頼者の中には、治療費や休業損害なども含めた賠償金の全てを「事故の慰謝料」と呼ぶ人もいます。また、離婚事件では10年以上続いた子どもの養育費を支払い終わった際に「やっと慰謝料を支払い終わった」と話す人もいます。
 また、交通事故で保険会社から送られてくる損害明細(示談提案書)では入通院慰謝料のことを「傷害慰謝料」あるいは「慰謝料」と書いていることがありますが、基本的には同じ意味ですので、この記事では「入通院慰謝料」と呼ぶことにします。

2.弁護士基準で慰謝料が大幅に増額することがある
 タイトルに書きましたが、実は弁護士に依頼することで大幅に賠償金を増額できる賠償項目の一つに「慰謝料」があります。
 交通事故の示談交渉をしているとよく
  「入通院慰謝料●●万円 (当社保険基準による)」
と書かれた慰謝料の計算書を目にしますし、多くの方はそれで納得されていることでしょう。
 しかし、弁護士の目から見ればそこはツッコミどころであり、私はまず「お宅の会社の保険基準なんか知らないけど・・・・」と疑ってかかります。
 よくよく保険会社の担当者に基準や計算方法を聞くと、法律上正当に受けられる賠償基準(=「裁判基準」あるいは「弁護士基準」と呼びます)よりかなり低い金額であることがほとんどです。
 しかし、我々弁護士が交渉に入ると、必ずこの裁判基準(弁護士基準)で交渉を行うため、保険会社も同じ基準で賠償しなければならない状況に追い込まれてしまうのです。

 つまり、この「慰謝料」は、弁護士が交渉すれば正当な賠償水準まで増額できることが十分に期待できる費目といえるでしょう。

3.弁護士基準は誰でも請求できる
 ここまで書いてみて、どうも「弁護士に依頼しろ」「依頼しろ」と、いう感が出ているのですが、実はそんなことはありません。
 弁護士基準は誰でも請求することができます。
 先ほども書きましたが、弁護士基準はあくまで裁判所が使う基準であり、弁護士だけしか使えない基準ではありません。ご自身で弁護士基準を勉強されて交渉し、さらにはご自身で裁判所に訴えを起こして弁護士基準で賠償を獲得することももちろん可能です。
 もし弁護士費用特約(本連載第1回「交通事故に役立つ弁護士費用保険(特約)」参照)にご加入がなく、弁護士費用も節約したいという方は、ご自身で請求することを考えてみられるとよいでしょう。
 
 ただ、最近のインターネット上には弁護士基準に関する情報が様々飛び交っています。
 多くの情報の中でどの情報が正しいのか混乱される方も少なくありませんので、くれぐれもご注意いただきたいと思います。

 次回は、慰謝料にも「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」「近親者慰謝料」など様々な種類がありますので、その違いや、弁護士基準と任意保険基準の違いなどについてお話をしたいと思います。

ものすごい数の仏像に驚きはしたが…《京都 三十三間堂》

ボス弁:季節のこころ模様
02 /27 2018
ものすごい数の仏像に驚きはしたが…
《京都 三十三間堂》
(2018.1.7)


《すごい》と言う人もいれば、
《すごい、すごい》と繰り返す人もいる。
私も、そう思った。
十一面観音像(千手観音でもある)が上下10段で、端から端まで長さ約120メートルの堂内に
びっしりと詰め込まれているのだから。
合計1001体という数のインパクト、本当にすごい。
ところで、よその寺の十一面観音は安らかな顔が多い。
しかし、ここの観音像にはそんな印象はない。
この寺は、平清盛の協力で作られたという。
同じ像が1000体近くも無表情に
同じ方向を向いている。
まるで兵隊の隊列ではないか。
武家のトップ、平家の棟梁であった清盛の心の中がわかるようだ。
悩む人間を救うためというのではなく、
自らの権勢や権力誇示の手段として作り上げたものに違いない。
三十三間堂に行ったのは今回が初めてだ。
これまで、この寺に行きたいと思ったことはなかった。
きっと、数や量のすごさで迫ってくるものに対する反発が
私の心の奥底にあったせいに違いない。


三十三間堂
三十三間堂はこんなにも長い。通し矢で有名である。


(弁護士 大澤龍司)